黒い情熱 パート19.5|艶やかな微笑  

黒い情熱 パート19.5

2010/03/09 17:04 |黒い情熱

 クーは、ブロードウェイからハリウッドに戻ってきたがどうにも何かが起きるような不安を駆り立てる。
そんな様子を静かに見つめるジュリエナはよほどキョーコの事が気になってるのかと見つめていた。
『クー?何か気になることでもあるの?』
『それがな・・・はっきりしないんだが、どうにも腑に落ちないんだ。はっきりとはわからないんだがどうにもキョーコの傍を離れちゃいけなかった気がする。あの子はそれじゃなくても両親の愛情に恵まれていない・・・そんなあの子を一人にしてよかったのかと思ってな!』
『そうね・・・私もあなたからキョーコの事を聞いたとき私が母親になれないかと思ったぐらいあの子を包みたかった。私でもそんな境遇で育っていたら世間を憎んで卑屈な人間になっていたと思うわ!それでも雄弁に語っているわねあの子の人に対するおびえた一面が演技でさまざまな人を演じられる要因・・・・そう思う。悲しすぎる境遇が胸を締め付ける。』
悲しみはキョーコを蝕み愛という楔は粉々にキョーコを破壊してしまっている。
そんなキョーコを形成するものは演技のほかにないのかと思ってしまう。
でも今手を離してしまえば見失ったままの愛の心はもどらぬままになる。
『ジュリ明日トニーを紹介する名目でキョーコを迎えにいこうと思う!ジュリは久遠を抜きにしてキョーコを娘として迎えてくれる?』
『わかったわ!私もそう言おうと思っていたの?』
『でもどうして久遠を抜きにする必要があるの?』
『それが・・・ジュリ落ち着いて聞いてほしい・・・こんな事を本人がいないのに言って良いのか非常に迷うが、久遠がキョーコに何か無体な真似をしたかもしれない!』

そういった時のジュリエナは、顔を引き攣らせてそんなことをする筈がないという心情に駆られた。
本当に久遠はそんな真似をしたのか?
にわかに信じられない・・・親としてそんな事をするような子供ではないはずと思っていた。
だけど、久遠が16歳までアメリカにいたときの荒れようからそうだとしたらと考えてしまう。
それほどの荒れようを二人は目の当たりにするも二人ともどうすることもできなかった。
万が一久遠の想いがキョーコに届かなかったとしたら荒れて無体な真似をしたというのはありうるかもと考えてしまう。
もし想いが叶っていたとしたら、キョーコはアメリカにいる筈がない。
それほどに久遠を尊敬していると公言するキョーコの話を聞いていたから・・・ジュリの心の中も確定していた。

『ジュリ・・・一応日本にいるボスにはアメリカにキョーコがいない旨を伝えてあるから来る事はないと思うが、万が一来た時を考えて私達でキョーコを守りたい。』
『わかったわ・・・久遠は女の敵だわ・・・クー一緒にキョーコを守りましょう・・・』
そしてあらぬ誤解のまま大幅にクーは話を広げていた。
さすがにクーも俳優であるため想像力と知恵が豊かで彼と彼女の妄想と言う名の狂気は今始まったばかりである。
翌朝、ハリウッドのスタジオではブロードウェイに行くというトニーに紹介するともちかけるクーの姿があった。
そのときジュリはハリウッドの近くの物件をピックアップしてキョーコが好きそうな部屋にするべくさまざまなものを買い湯水のごとく数億の金が淡雪のようになくなった。

翌朝
『トニーたびたび申し訳ないが、キョーコをちゃんと紹介したいから私も連れて行ってくれないか?』
『そうだな・・・一緒にきてもらえるとうれしいのだけどクーは忙しいんじゃないのかい?』
『大丈夫だ・・・エージェントマネージャーにはちゃんと伝えてあるから』
飛行機に乗ること6時間半ほどの短距離を移動をするがチャーターしている最速便を使い二人は移動をしていた。

その為通常より短い時間でハリウッドからニューヨークへついた。
差し迫ったスケジュールもあったため短時間で済ますつもりが二人が当日滞在時間を長くなることを二人は知らなかった。
それというのもここで久遠と鉢合わせになるとは思ってなかった。

ブロードウェイでは、さまざまな演技者がいる。
目立つであろう二人はそんな中目立たぬように変装をしていた。
変装は帽子にサングラスといった姿であるのにそのゴージャスなオーラは隠しようもなく発揮して、さらに周りスタッフはその様子からもう誰かというのは気づかれていた。
そして舞台上に上がったブロードウェイで有名な二人は人の目を引くほど引き込む演技をしている。
やはりそんな演技力で評判の二人は注目の人物として新たな役へと身を置いていた。
その様子を3人の男が真剣な表情で見ている。
当日、ブロードウェイでは演技が終了し後片付けをするスタッフの姿の中に真剣な表情をするキョーコとケネスが打ち合わせをしていた。
そこへ近づいていく3人の影が、あった。

つづく

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あとがき
なんだか波乱と書いていたのですが、そこに持っていくまでに少しかかりすぎてしまいました。
次がとうとうそれになります。